話題のへーゲリアンワイフを訳してみたよ

私(33)の夫(35)の仕事が哲学研究なせいで離婚しそう

ヘーゲル主義者の妻(hegelianwife)  2019年9月21日

私と夫は二人とも大学教員です。結婚して3年、付き合い始めて6年。彼は哲学研究者で、私は物理学者です。ぼくの仕事をちゃんとわかろうとしてくれたことないよね、とこのごろ不機嫌に。私も少しは哲学の古典を読んだことがありますが、夫の研究は「大陸的」哲学の伝統に連なるとか何とか。でも残念なことに、夫の言うことはどれも完全に常軌を逸しているように思えます。

何が問題かというと…。彼の研究には明らかに物理学の主張が含まれているのですが、その物理学は単に間違いというか、恥ずかしいほど間違ってるんです! 私は夫の博論を今まで読んだことがなくて、ひどい奴だなと言われたらそれはその通りなんですけど、とにかくそれを読んでみたら、物質に「延長性」があることと質量を持つことの必然性関係性、とかそこらじゅうに書いてあるし、基本的粒子の「形状」とまで言っています。明らかなナンセンスないし誤りです。その博論でも他の論文でも自分のことを「科学的」な「唯物論者」であると思って書いているみたいなんですが、彼にとって科学とか物質という単語が何を意味しているかというと、もっぱら、空間中を小さいビリヤードボールが飛んでるみたいな、時代遅れの19世紀的概念から一歩も進んでいません。現代の物理学のことをちゃんと勉強し始めるにはこうしたらいいかもね、と私は優しく説明しようとしたのですが(彼は現代物理学の本を一冊も読んだことがないし、「数学は苦手」だと自分でも認めています)、ただ怒るばかりで、ヘーゲルの体系は前提的なものでありあらゆる可能な理性的思考の基礎であるからそもそも他の文献を読む必要など一切ないのだと言い張ります(何を言っているのか私にはさっぱり分かりません)。「思弁的命題」とかそういう学術語を口にするので、私がその意味や実例をきいてみると、それに輪をかけて深遠で無意味な哲学用語で喋り出します。

それだけじゃないんです。彼はドイツ語の言い回しや学術語を何度も使う (し発音する)のですがその用法(と発音)は不正確ないし無意味です(私はドイツ語で育ちました)。ぼくはドイツ語ができるし(できていません)ヘーゲルは「原文で読まなければ理解できない」と言うのですが明らかにドイツ語が読めていないし、私はその原文とやらを読もうとさえしたのですが夫以上にわけがわかりません。

それだけじゃありません。彼のヘーゲルへの熱中はキモいという域に達しています。ヘーゲル以外の人間が言った全てのことはヘーゲルと一致するなら冗長だしヘーゲルと一致しないなら間違いだ、と本当にそう言ったんです。寝室には額縁入りのヘーゲルの肖像画。携帯の待ち受け画像もヘーゲルのそれに替わりました。前は私の写真だったのに。夫には私と向き合ってもらいたいのですが、夫の中では私と二百歳の哲学者がいい勝負をしてるんでしょうか。」

 

 

原文はこちら

Redditへの投稿だけど、すぐに削除されたみたい。

翻訳上で迷ったところ

・原文では「私(33女性)の夫(35男性)」とわざわざ性別を入れてるけど、これは女女とか男男の夫婦もいるからわざわざ明記してるということ? 訳文では省いてしまったけど、ポリコレ世界を描くには訳出した方がいいのかな

・タイトルが訳しにくい。「離婚しそう」と訳したけど、「ruining our marriage 結婚生活が破綻しつつある」とはちょっとニュアンスが違うかも。夫のcareerのせいで、というのも訳しにくい。

・academics 大学教員と訳したが、教員とは限らないかも? 大学用語って驚くほど訳しにくい。自分が大学人じゃないと。まあいいか。人文系で学生への講義を受け持たない若い研究者とかいるわけないたぶん。

・ヘーゲルの哲学体型が「presuppositional」… 前提的と訳したけど、なにか特別な訳語があるかも

・最後の一文が訳しにくいなあ。ちょっとした訳し方の違いで、妻の気持ちとか主張がガラッと変わってしまう

・completely insane とか nonsensically がスカッと訳せない。悪口の訳し方に翻訳力が出るよね。うう

その他の感想

・Reddit だしたぶん創作だよ

・だって、若くてヘーゲル主義者で妻が物理学者の大学教員とか、いかに英語圏広しといえどレアだから、もし実話なら一発で特定されちゃうよ

・創作であってほしいよ

大麻銘柄アナリスト、ロブ・フェイガン氏

金融専門誌バロンズが、大麻銘柄アナリストのロブ・フェイガン氏にインタビュー 。マリファナが大好きだから大麻銘柄の専門家になった、というところが面白いので、そこだけ抜粋訳をします。記事全文は こちら

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バロンズ: 君みたいなカナダの素敵な少年が、いったいどうして、大麻銘柄の担当なんかになったの?

フェイガン: 2011年にGMP証券に就職して、消費者商品アナリストのマーティン・ランドレーのリサーチ・アナリスト〔助手〕になったんです。

で、僕ら二人がキャノピー・グロース〔世界最大の医療用大麻製造会社〕を紹介されて、上場を手掛けました。この会社は、GMP証券以外の証券会社には、会ってもらうことさえ苦労していた。でもGMP証券はニッチを攻めてシェアを取りたがっていた。大麻関連銘柄もその一つ。

でも、市場分析をしてるときマーティンは、「葉っぱ野郎 the pot guy とか呼ばれたくないなあ」って言ってて。

で、ぼくが、「ぼくはずっと葉っぱ野郎になりたかったです!」と。大麻の大ファンなんだ。これには情熱を抱いてる。正確なナレッジベースを持ってるから、競争上の優位性がある。

バロンズ: ナレッジベース?

フェイガン:経験の蓄積だよ…ほかにどう言えというんです? 目利きができる、っていうのかな。

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大麻またはマリファナと訳したのは cannabis で、これは、酩酊作用の強いいわゆるマリファナと、酩酊作用の弱い麻(ヘンプ)の、両方を含む言葉のようです。大麻やマリファナというと麻薬のイメージが強いですが、医療用や健康食品としての活用も期待されています。

いまの日本では、大麻ビジネスの会社が上場するなどということは想像もできませんが、マリファナ合法化の波は米国を含め急速に広がっています。すでに北米ではマリファナ関連銘柄が何社も上場しているというのですから、日本にもいずれはこういうアナリストが現れるのかもしれませんね。

the pot guy を「葉っぱ野郎」と訳しましたが、私はマリファナに詳しくないので、ちょっとニュアンスを捉えていないかもしれません。

記事全文は こちら(読み応えのある真面目な記事です、為念)

 

私が翻訳した別の記事、バリュー投資家のビタリー・カツェネルソン氏によるこちらの記事も、ぜひ御覧ください。

「マリファナ銘柄に投資するべきか?」ビタリー・カツェネルソン